組立の各手順が正しい順序で行われたか、カメラで確認するには?
DBR77 Team · 公開日
カメラは、計画した手順が行われるたびにその手順を認識し、タブレットのチェックリストにその場でチェックを付けていきます。ボルト3より先にボルト4を締めるなど順序が崩れると、作業者がまだ工具を手にしているうちに、タブレットに警告が表示されます。手順が抜けたまま作業が終わると、システムが抜けた手順を示し、その位置に印を付けた画像を送ります。チェックリストはカメラの認識結果で自動的に埋まり、手で記入する必要はありません。
最後に部品の数を数えれば、すべてそろっているかは分かりますが、どの順番で取り付けたかは分かりません。基準品と照合して数を確認する方法は、記事ボルトがすべて所定の位置に付いているか、カメラで確認する方法で解説しました。この記事では、手順とその順序を扱います。

手順の抜けがこれほど多いのはなぜか
手順の抜けはごくありふれたヒューマンエラーで、慣れた作業でも起きます。英国安全衛生庁(Health and Safety Executive、HSE)は、よくある保全ミスとして、誤った再組立と並んで作業手順の抜けを挙げています。また、経験豊富で訓練を十分に受け、意欲もある作業者でも、単純なうっかりミスや抜けを起こすことがあるとしています。
航空機整備のデータにも同じ傾向があります。オーストラリア運輸安全局(Australian Transport Safety Bureau、ATSB)のレビューによると、ボーイングのデータベースで最も多い整備ミスは抜けで、部品の付け忘れや取付不完全がこれに当たります。複雑な手組立を対象に公表されたケーススタディでも、最も多かったエラーモードは作業の抜けで、19件ありました。原因の一つは、ボルトに必要な締付力をかけていなかったことです。
クレームが来るたびに「その手順はやったのか」と聞かれますが、記録がなければ答えは記憶頼みになります。


数と同じくらい順序が重要な理由
多くの締結部では、どの順番で締めるかで結果が決まります。代表的な例がフランジです。欧州と米国のシール業界団体によると、ボルトの締付順序はガスケットにかかる面圧に大きく影響します。締付が不適切だとフランジの平行度が崩れることがあり、ナットは対角線の順に締める(対角締め)べきだとしています。欧州シール協会(European Sealing Association、ESA)のベストプラクティス記事はさらに踏み込んで、フランジ継手からの漏れの原因として最も多いのは、承認された締付順序を守らないことだとしています。
ドイツのVDI/VDE 2862は、ねじ締結部をリスクカテゴリーA、B、Cに分けています。生命や身体への危険があるものから重要でないものまでの3段階で、カテゴリーごとに締結作業の最低要件が決められています。
最終検査では順序は見えません。最後のボルトを締めてしまえば、間違った順序で締めたフランジも正しく締めたフランジも見た目は同じです。違いが分かるのは、漏れが出たときか、耐圧試験で不合格になったときです。
カメラが作業手順書に沿って確認する仕組み
カメラは工程で行われている作業を計画した順序と照合し、次の3つの場面で反応します。
- 計画した手順を1つずつ認識する。 作業者がボルト1を取り付けると、カメラがそれを確認し、タブレットのチェックリストでその手順にチェックを付けます。
- 順序が違えばすぐに警告する。 ボルト3より先にボルト4を締めると、作業者がまだ工具を手にしているうちに、タブレットに「順序違い:ボルト4がボルト3より先」と表示されます。
- 抜けた手順を最後に示す。 全10手順のうち9手順しか確認できないまま作業が終わると、システムが「手順3を確認できません」と知らせ、位置3に印を付けた画像を作業者に送ります。

DBR77 Vision AIのプレゼンテーションに基づく説明用の例。手順3が抜けると、すぐに順序違いの警告が表示され、作業の最後に抜けた手順が示されます。
この例では、作業者がナットランナを使い、ボルト10本のフランジ1枚を締めています。計画する順序は、単純な番号順でも、フランジの締付で使う対角締めでも構いません。
| 場面 | システムが行うこと | 対応する人 |
|---|---|---|
| 計画した順序どおりに手順を実施 | チェックリストにチェックを付け、ログに残す | 対応不要 |
| 順序が違う手順を実施 | すぐにタブレットで警告する | 作業者(工具を手にしたまま) |
| 手順が抜けたまま作業が終了 | 抜けた手順を示し、その位置に印を付けた画像を送る | 作業者 |
| システムに教えていない事象 | 未分類の異常として報告する。エンジニアが一度名前を付けると新しいカテゴリーになる | エンジニア |
ASQは、古典的なポカヨケ手法の一つとして、作業の順序を確認し、手順が順番どおりに行われたことを確かめる方法を挙げ、エラーが起きたことは警告信号で作業者に知らせるとしています。カメラを使えば、工具ごとにスイッチを付けなくてもこの方法を実現できます。
順序の確認を始めるのに必要なもの
順序の確認に必要なものは3つです。文書化された作業手順書、作業エリアが見えるカメラ、そして正しく行った作業の例が数件です。
- 作業手順書を基準にする。 作業者がどの順序で作業を行うかは、作業手順書で決まります。手順書で順序が決まっていない場合は、カメラを設定する前に決めてください。
- 各手順がカメラから見える必要がある。 DBR77 IIoTでは、カメラを担う部分がVision AIです。一般的なIPカメラを使えます。画像は工場内に置いたコンピューターで解析し、1枚あたりの解析時間は約25ミリ秒です。
- 確認する手順を言葉で入力する。 何を探すかをエンジニアが入力し、いくつかの例にOKかNOKのラベルを付けます。学習用のデータを集める必要はなく、別の学習プロジェクトを立ち上げることもありません。
- 対応を自社で決める。 カウント、ログ保存、警告、担当者への通知を、プログラミングなしで設定できます。
テストの進め方は、ほかのVision AIの検査と同じです。デモと対象工程の確認、NDAを結んだうえでの数枚の写真と短い動画によるテスト、1工程でのPoC(概念実証)と進み、結果にご納得いただけた場合にだけ横展開します。最後の段階については、ガイド1つのパイロットの成功を工場の標準にする方法で解説しています。
カメラにできないこと、ほかの確認に任せること
カメラが確認するのは、手順が行われたことと、その順序です。締結部に関するほかの確認の代わりにはなりません。
- トルク。 カメラには、位置4でナットランナが使われたことが見えます。トルク値は締付工具とその記録で確認します。カテゴリーAの安全上重要な締結部について、VDI/VDE 2862は締付データをすべて記録することを求めています。このガイドラインに関するAtlas Copcoのホワイトペーパーは、データの記録に加えて、自動エラー検出を使ってもよいとしています。カメラによる確認は、工具のデータを補うこうした仕組みの一つです。
- 見えない手順。 カバーの裏やハウジングの中で行う手順、作業者の手に隠れた手順は確認できません。カメラの位置を変えたり2台目のカメラを追加したりすれば、一部は見えるようになります。カメラを決める前に、工程で複数のカメラ構成を試します。
- 判断。 Vision AIは警告と報告を行い、次にどうするかは人が判断します。ラインや工具を止めることはありません。
- 安全機能。 Vision AIは認証を受けた安全システムではありません。機械の安全は、そのために設計されたシステムが引き続き担います。
警告がどう人に届くかは、確認そのものと同じくらい重要です。これについては記事現場で設備アラートが機能しない理由で、新しい確認を始めた最初の数週間については記事作業者がまだIoTの信号を信頼していないときにすべきことで取り上げています。
DBR77 IIoTの中での位置付け
Vision AIは、DBR77 IIoTでカメラを担う部分です。工程のタブレットはすでに、複雑な作業を手順ごとに作業者へ案内しています。カメラはそこに、各手順が実際に行われたという確認を加えます。
- 当社の機器はデータを読み取るだけです。設備に指令を送ることはなく、制御システムにも手を加えません。
- 画像は工場内で解析し、映像は録画しません。作業者には、該当する位置に印を付けた静止画が1枚届きます。
- Vision AIは、DBR77独自の産業用AIであるDBR77 Vectorの上で動き、お客様のサーバーに導入することもできます。書面による同意がない限り、お客様のデータをモデルの学習に使うことはありません。DBR77はISO/IEC 27001:2022の認証を取得しています。
- Vision AIのイベントはIRISに記録されます。IRISで品質問題を生産・保全とどう結び付けるかは、IRISの記事品質問題を生産・保全と結び付ける方法をご覧ください。
よくある質問
どの手順が抜けたかを、カメラで特定できますか?
はい。手順が抜けたまま作業が終わると、システムが「手順3を確認できません」のように抜けた手順を示し、その位置に印を付けた画像を作業者に送ります。
作業者がタブレットで手順ごとに完了を入力する必要がありますか?
いいえ。チェックリストはカメラの認識結果で自動的に埋まり、手で記入する必要はありません。作業者の画面では、作業が進むにつれて各手順に順にチェックが付いていきます。
順序が1から10の番号順ではなく、対角締めの場合は?
計画する順序は、作業手順書に書かれたとおりです。フランジボルトの対角締めも、単純な番号順と同じように扱えます。各手順を、計画した位置と順序に照らして確認します。
順序違いの警告で工具は止まりますか?
いいえ。Vision AIは作業者に警告し、イベントをログに残します。工具やラインを止めるかどうかは人が判断します。
カメラで作業者を録画するのですか?
映像は録画しません。画像は工場内のコンピューターで解析し、作業者には、該当する位置に印を付けた作業エリアの静止画が1枚届きます。職場へのカメラ設置に関する法令や社内ルールを確認し、最初のカメラを設置する前に従業員へ周知してください。
まとめ
順序が重要で、手順の抜けですでに損失が出た作業を1つ選んでください。漏れたフランジ、ねじを1本付け忘れたまま元に戻したカバー、手直ししたのに戻ってきた製品などです。今週中に、カメラを取り付けられそうな位置からその作業を2回撮影してください。1回は正しく、もう1回はテスト用の部品で手順を1つ抜いて行います。あわせて、作業手順書に書かれた順序を書き留めておいてください。自社の工程でカメラが手順を追えるかを確かめる最初のテストには、これで十分です。
出典
- HSE, Maintenance error
- A. Hobbs, Australian Transport Safety Bureau, An Overview of Human Factors in Aviation Maintenance, 2008
- Torres, Nadeau, Landau, Classification and Quantification of Human Error in Manufacturing: A Case Study in Complex Manual Assembly, Applied Sciences, 2021
- ESA and FSA, Guidelines for safe seal usage: Flanges and Gaskets, 1998
- European Sealing Association (R. Wacker), Primary flange forces, Part 2(Spetechによる転載)
- VDI/VDE, 2862 Part 2: Minimum requirements for application of fastening systems and tools(目次), 2015
- Atlas Copco, VDI/VDE 2862 Part 2に関するホワイトペーパー, 2023
- ASQ, What is Poka-Yoke? Mistake and Error Proofing
- DBR77, DBR77 IIoT, 2026
- DBR77, IIoTおよびVision AIの顧客向けプレゼンテーション, 2026